1日15cmしか織れない、特別なビロード
「紋ビロード」は、①パイル(ループ状になっている糸)と、②カットパイル(ループ状になっている糸を裁断したもの)の表情の違いを活かした織物です。
日本に「紋ビロード」が伝えられたのは16世紀頃と言われています。当時、日本と交易があったスペイン・ポルトガルから伝来し、その美しさと珍しさから、サムライがマントなどにして自身の権力を誇示していたようです。
日本における「紋ビロード」の製作方法は1世紀以上の間解明されなかったため、流通しているのはすべて輸入品でした。
しかし、17世紀中頃に輸入された「紋ビロード」の一部に、製作過程において本来抜かれているはずの銅線が、偶然残っていたことで製織方法が解明されました。これが、日本における「紋ビロード」の生産の始まりであり、京都は、その発祥の地です。
「紋ビロード」は、経糸を2種類(①生地のベース部分を作る糸、②パイル部分を作る糸)使います。
ベースはサテン生地で、パイル部分には針金を使いながら高さを出し、ループを作ります。
生地が完成したら、針金の上から糸をカットして、ビロード部分を作ります。また、パイル部分として残す場合は、カットせずに針金を抜きます。
サテンの上に立体的にパイル・ビロードで柄を表現できるのは、日本では当社のみです。
「紋ビロード」は、1日15cmしか織れない特別な技術を要します。
また、織技術だけではなく、ビロードをカットする技法という2つの難易度の高い技術を、当社は次世代へと継承しています。