“すき間”が作り出す美しい織物
この織物は、編物のように見えますが、「文羅」という織物で、薄く透けたような雰囲気が特徴です。
現代に於いては類似する織物は日本以外では見かけません。この作品は、「文羅」をベースに、刺繍を施しています。
「文羅」の織り方は、経糸を両隣の経糸と交互によじりながら、2種類のすき間を作りだすことがベースの織り方です。
こうして織られたすき間の大小から、文様が表現されています。
「文羅」のルーツは、中国・漢代(B.C.202~A.D.184)、や南アメリカ大陸のアンデス文明でも作られていました。日本では、7世紀頃から製作が始まったと考えられており、「正倉院」(日本の宝物を保管している場所)に7世紀頃の「文羅」が保管されています。「文羅」の技術は、仏や菩薩を飾る装飾として、あるいは、”舞楽”(日本古来の舞)の衣装などに使用されていたようです。
「文羅」は、織物の中で最も複雑であり、大変高度な技術が必要であるため、日本における技術継承が15世紀頃に途絶えてしまいました。
しかしながら、1925年以降に、当社社員が「文羅」の製作方法を研究し始め、ついに復興することができました。
現在、「文羅」は、京都の西陣織にも取り入れられ、今では僅かな工房のみが織り続けています。独特の薄く隙間のある織物で盛夏に着用する帯として好適です。