苔や錆をモチーフに
年月を経たモノにしかない味わいや深みを持つ「錆」、朽ち行くものの象徴である一方で芳醇な緑に旺盛な生命力を感じさせる「苔」。この「錆」の腐食度によって変化する色やザラッとした感触、「苔」の微妙な色合いや毛羽立ち感、などの日本の生んだ美意識を、様々な糸や織の技法を駆使し、織物ならではの立体感や質感を活かして表現しました。
特にこだわったのは糸。箔糸や意匠撚糸と呼ばれるものを用いています。箔糸とは、もともとは金箔やプラチナ箔、薄くスライスした貝を貼った和紙を細く裁断して糸状にしたものを指し、現在では様々な方法で作られています。この箔糸を緯糸として織り込む西陣織の伝統技法「引箔」にヒントを得て、現代の技術で新しい箔糸の魅力を引き出しました。また意匠撚糸とは、様々な形状や色・太さの糸を撚って新たに作る糸の事を言い、組み合わせにより表情を変え無限の可能性を持っています。今回は、様々な色糸と箔糸を一緒に撚った意匠撚糸を使用しました。川島織物セルコンでは自社工場で意匠撚糸を生産しています。