2025年 大阪・関西万博 迎賓館を彩る現代アート作品 現代美術家 手塚愛子・川人綾がデザイン・制作監修のタペストリー披露 4月28日、特設WEBサイト公開
株式会社川島織物セルコン(本社:京都市左京区 社長:光岡 朗)は、「2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)(主催:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)」において、賓客の接遇施設である迎賓館を彩るタペストリーを制作いたしました。

2025 / 解かれたジャカード織(EPOTEX)の経糸で織り直された織物(絹、ポリエステル)、木製パネル / H421.0 x W1,370.0 x D30.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、川島織物文化館

2025 / 綴織、綿、レーヨン / H200.0 x W900.0 cm
川島織物セルコンは創業以来、さまざまな活動を通じて織物と向き合い「記憶に残る、織と美。」を追求してきました。その一つが「万国博覧会」であり、1889 年のパリ万国博覧会以来、数々の万博へ新しい織物を出品することで製織技術を高め、織物の可能性を広げてきました。このたびの大阪・関西万博においても、織の極みを目指す姿勢を継承し、技術力をさらに向上させるべく、アートシーンで活躍する現代美術家の手塚愛子、川人綾両氏によるデザイン・制作監修のもと国内外の賓客の接遇施設である迎賓館を彩るタペストリーを5点制作、協賛しました。
手塚氏は、バンケットルームを飾る2作品を担当。「時代を織り直す(勇気と好奇心についての考察)」は、江戸時代の大阪市中の営みを描いた「摂津名所図会」を背景に、数々のモチーフが謎解きのように散りばめられた2枚の巨大なジャカード織物の緯糸の一部を解き、残された経糸で織り直した作品です。「迎賓館(織り途中・明治から令和へ)」は、明治時代に造幣寮(現在の造幣局)の応接所であり、当時の大阪の迎賓館として機能した泉布観と、大阪・関西万博の迎賓館(デザイン監修:藤本壮介)パースを基調に、古代より伝わる上代裂の意匠を用い、長い時を越え続く日本と外国とのつながりを示しています。

2025 / 綴織、綿、レーヨン、木製の杼 / H402.0 x W903.5 x D13.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、藤本壮介建築設計事務所
また、川人氏はダイニングルームの3作品を担当。1800色に染め分けた糸によって織り上げられ、緻密な織物でありながら、手織りのぬくもりも感じられる綴織「CUT:C/U/T_CC-CM_I」、川人氏のグリットペインティング作品を錦織の技術で再現した「CUN: C/U/N_dcxl-dclx_I」「CUN:C/U/N_dcxl-dclx_II」で技術者(人)の制御できる領域を超えた美しさを表現しました。

2025 / 錦織(紋織の一種)、絹、和紙 / H64.0 x W66.0 cm
Photo by Yuki Moriya 撮影:守屋友樹
モノづくりの研究のために世界中から集めてきた染織品や古書類、当社が製作してきた織物に関する原画や試織などの資料を数多く保管・紹介している企業博物館「川島織物文化館」では、大阪・関西万博会期に合わせ、4月14日(月)より使用した糸や試作など本作の制作に関する資料を展示中です。現代美術家の手塚愛子、川人綾の両氏の現代的な感性と、当社が誇る技術の融合した5作品は、大阪・関西万博終了後、川島織物文化館に収蔵予定です。
また、4月28日(月)に特設サイトを公開し、迎賓館を彩るタペストリーの他、大催事場やさまざまなパビリオンへの納入作品を順次紹介します。大阪・関西万博の見どころのひとつとして”織物”にもご着目ください。
【ゆめ織るEXPO — 万博と織物の意外なつながり —1889パリ から 2025大阪・関西 エピローグ 大阪・関西万博】
タイトル:ゆめ織るEXPO — 万博と織物の意外なつながり —1889パリ から 2025大阪・関西 エピローグ 大阪・関西万博
会期:2025年4月14日(月)~2025年10月31日(金)
場所:川島織物文化館
開館時間:10:00〜16:30(⼊館は 16:00 まで)
休館⽇:土・日・祝祭日、夏期、年末年始など
入館料:無料
見学予約:見学は事前予約制 ※見学をご希望の方は、あらかじめインターネットでのご予約をお願いします。
ご見学予約 はこちら
見学希望日の前日までに、お申込みください。
(月曜日ご来館希望の場合は前週金曜日)
ホームページ : https://www.kawashimaselkon.co.jp/bunkakan/
【川島織物セルコン 大阪・関西万博 特設サイト】 ※4月28日(月)公開
https://www.kawashimaselkon.co.jp/event/expo2025/
【大阪・関西万博 概要】 ※このリリースに記載の内容は発表時点のものです
EXPO 2025 大阪・関西万博
開催期間:2025年4月13日(日)~10月13日(月)
開催場所:大阪 夢洲(ゆめしま)
公式HP:https://www.expo2025.or.jp
■ 作品解説

2025 / 解かれたジャカード織(EPOTEX)の経糸で織り直された織物(絹、ポリエステル)、木製パネル / H421.0 x W1,370.0 x D30.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、川島織物文化館
左右の織物の中には、鎖国時代(16~17世紀)に描かれた日本地図と世界地図、18世紀末の大阪の様子(四ツ橋、心斎橋筋、唐物屋)、日本初のパスポートに残された政府の押印と受給者の身体的特徴、西洋の時刻制度学習のためのイギリスの時計(明治元年)、日本近代織物の礎を築いた川島織物の商標や織物図案(明治時代)、二代川島甚兵衞の筆跡(19世紀末)、二代川島甚兵衞宛の手紙の差出人の文字、明治期の万博関連書類(20世紀初頭)、明治期の迎賓館「泉布観」外観図、現代のパスポートのICチップ、絵文字、@や© の記号、などが散りばめられている。
史実に記録されない「人間の未知なるものへの好奇心」や「他者へ開くことへの勇気」の鼓動を丁寧に選びとり、それらを一度解体し、織り直す。謎解きをするように、あるいは星座をつくるように、この作品を見てほしいと願う。(手塚 愛子)

2025 / 綴織、綿、レーヨン、木製の杼 / H402.0 x W903.5 x D13.0 cm
資料提供:大阪歴史博物館、藤本壮介建築設計事務所
左は明治時代・大阪の迎賓館「泉布観」、右は令和時代の迎賓館(藤本壮介氏によるデザイン監修)。それぞれに配置されるのは、樹下動物文と連珠文を表す二つの上代裂である。上代裂には、7~8世紀頃にシルクロードを経由して伝えられた西方文様の影響が色濃く見て取れる。迎賓館に掛けられたこの二つの織物は、古代、近世、現代という悠久の時を経た日本の外交の軌跡を表している。
極東の島国である日本が、どのように世界に開き、外交をしていくのかという葛藤を表すかのように、二つの織物は敢えて「織り途中」である。明治と令和、それぞれの織り糸は左右を行き来して部分的に繋がり、それぞれの構成要素を分かち合う。この織物は川島織物セルコンにより、伝統的な手織り技法「綴織」で織られている。織物職人が一時的に作業を止める際、「杼」を白い経糸に挟むことがあるが、その状態も再現する。(手塚 愛子)

2025 / 綴織、綿、レーヨン / H200.0 x W900.0 cm
川島織物セルコンの綴織はフランスのゴブラン織を参考に発展したが、明治になり日本画の顔料が多色使いへと改良研究されることを目の当たりにし、絵画を織物で表現することに心がけていた二代川島甚兵衞は、綴織に多色使いを取り入れ、独自の色暈し技法を確立した。
このように国家間の交流と独自の文化によって発展した「多色使い」をテーマにしたタペストリーは、大阪・関西万博の迎賓館に相応しいと考え制作した。1800色に染め分けた糸で織り上げた本作は緻密な織物であり、近くで見ると手作業や素材のぬくもりを感じる。その美しさとやわらかな錯視効果を通じ、世界を完全に把握することは不可能であるという事実を鑑賞者と感覚として共有したい。(川人 綾)

2025 / 錦織(紋織の一種)、絹、和紙 / H64.0 x W66.0 cm
Photo by Yuki Moriya 撮影:守屋友樹
日本の伝統的な染織は、緻密な手作業の積み重ねによるもので、熟練の職人であっても微妙なズレが生じる。このズレは人の制御を越えた美しさをもつ。 同様に、対象と人の認知の間にも時にズレが生じる。三次元の世界は、網膜が捉えた二次元画像から脳が推測したものであり、視覚と認知のメカニズムは錯覚を生むことがある。現実とイメージのズレは、人は脳が加工した限定的世界を見ていることを示す。 私はグリッドをアクリル絵具で重ねて描くことで生じる微妙なズレにより、人の制御を越えた美しさを絵画上に表出させると同時にやわらかな錯視効果を生み出し、世界を完全に把握することは不可能であるという事実を鑑賞者と感覚として共有することを目指している。 本作は川島織物セルコンの錦織(紋織の一種)の技術により、その絵画を約30倍のサイズで再現したものである。(川人 綾)
■ 手塚 愛子(AIKO TEZUKA)プロフィール

1976年東京生まれ。ベルリンと東京の二拠点で作品制作を行う。
2001年武蔵野美術大学大学院油画コース修了(戸谷成雄氏に師事)。2005年京都市立芸術大学大学院油画領域博士(後期)課程修了(宇佐美圭司氏に師事)。2010年五島記念文化賞美術新人賞により渡英。その後文化庁新進芸術家海外研修制度により渡独。織られたものを解きほぐす作品を1997年より開始し、歴史上の造形物を引用、編集しながら新たな構造体を作り出す独自の手法により制作を続ける。日本をはじめオランダ、スイス、韓国、イギリス、ドイツ、シンガポール、中国、アメリカなどで展覧会を開催。主なコレクションに国立国際美術館、京都国立近代美術館、東京都現代美術館、オランダテキスタイル美術館、ベルリン国立アジア美術館、ハンブルク美術工芸博物館など多数。
公式WEB http://aikotezuka.com/
Instagram https://www.instagram.com/aikotezuka/
■ 川人 綾(AYA KAWATO) プロフィール

1988年奈良県生まれ。京都府在住。
神経科学者の父のもと、脳を通して世界を把握しているということを強く意識するようになる。京都で日本の伝統的な染織を学んだ後、パリ国立高等美術学校交換留学を経て、2019年東京藝術大学大学院先端芸術表現科博士後期課程修了。「制御とズレ」をテーマに、日本の伝統的な染織や現代の神経科学を背景にもつ、抽象的なグリッド状のペインティングを中心に制作している。近年展覧会は、東京オペラシティアートギャラリー、京都市京セラ美術館の他、パリやジュネーブでも開催。主なコレクションに、シャネル合同会社、東京藝術大学大学美術館。主な受賞歴に、2018年「野村美術賞2018」野村財団、2017年「2074、夢の世界グランプリ」コルベール委員会・東京藝術大学、 2016年 「第11回TAGBOAT AWARD 審査員特別賞 小山登美夫賞」 TAGBOAT。
公式WEB:https://ayakawato.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ayakawato/
■ 川島織物セルコン プロフィール

1843 年に京都で創業し、今年182 年目を迎えた織物メーカー。
古くは明治宮殿、近年では京都迎賓館や数々のラグジュアリーホテルに織物を納入するなど、その唯⼀無⼆のクオリティと表現力の幅広さが⾼く評価されている。熟練の職人による伝統的な⼿織り技術に加え、現代ならではのテクノロジーを駆使した機械織りも積極的に取り入れ、文化の継承と未来へつながる技術⾰新の探求に⼒を注いでいる。 2019年よりその意志を体現するプロジェクト“織物屋の試み”を通して「美の表現と織物の可能性に対するあくなき探求を起点とする無理難題に挑戦する」ことで、織物の進化・発展を目指し、ミラノデザインウィークにも出展している。京都の本社には、企画・デザインから染め・織りまで⼀貫⽣産を⼿掛ける織物の製造⼯場、歴史的価値の⾼い作品を所蔵する「川島織物文化館」、次世代に織物技術を継承する「川島テキスタイルスクール」を併設。織物文化の継承と発展、そして発信に努めている。
公式WEB:https://www.kawashimaselkon.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/kawashimaselkon_textiles/