祇園祭 橋弁慶山の前懸が完成しました 祭礼幕の復元新調
- CASE STUDY
東山魁夷が手がけた奈良・唐招提寺の障壁画「濤声(とうせい)」を原画とした西陣織綴錦パネル「濤声」が完成、ちばぎん本店ビルにお納めしました。
数年をかけ、精魂をこめて製作を進めてきた大作が出来上がりました。千葉銀行の新本店ビル「 ちばぎん本店ビル 」にお納めした綴織(つづれおり)パネルです。
東山魁夷が手がけた奈良・唐招提寺の障壁画「濤声(とうせい)」を原画とする織物で、海岸に打ち寄せる波と、それに抗うかのようにそびえる岩が表現されています。
戦後を代表する日本画家 東山魁夷(明治41〜平成11年)は、唐招提寺より依頼を受け、国宝 鑑真和上坐像が奉られている御影堂(みえいどう)の障壁画を制作しました。「山雲(さんうん)」「濤声(とうせい)」「揚州薫風(ようしゅうくんぷう)」「黄山暁雲(こうざんぎょううん)」「桂林月宵(けいりんげっしょう)」の5部からなる大作で、「山雲」「濤声」は日本への渡航中に失明した鑑真が日本で見たかったであろう風景が描かれたもので、色鮮やかなブルーが基調になっています。
濤声は、全体的に青色を基調としながらも、波の静・動の動き、岩に波が打ち付けられしぶきが飛ぶ様子など絶妙な色の変化のある作品です。この繊細な色の移り変わりを織で表現するのです。原画にいかに忠実に織物として仕上げるか・・・、製作担当者の試行錯誤が始まりました。
特に苦労したのは、色の使い方を決める配色(はいしょく)です。
配色とは、どこにどのような色の糸を使って織るのかを決める工程で、織る際の指示書となる織下絵(おりしたえ)に、織りで使う糸の番号(※)を記入していきます。波・岩それぞれを表現するため、濃い色から薄い色まで、微妙に色の異なる様々な糸の組合せを準備しました。
※用意した糸に色ごとに番号を付けて管理する。
織下絵を、作業台に広げて糸の番号を記入していきますが、目の前に見えている範囲は完成品のごく一部です。作品全体の色合いを意識しながら特定の部分の色を決めていくことは大変な作業でした。
配色担当者からの依頼に応えるべく、糸を染めるのも一苦労でした。
染めなければならない色が似ていて、違いが少ししかないため、慎重に染めていきました。
織りの工程では、経糸(たていと)の下に置いた織下絵の指示にしたがって織っていきます。
普段は糸の番号よりも色を見て判断して織っていくことが多い 織り技術者も、少し織っては色の具合を障壁画の写真と見比べる、という確認を繰り返しおこないながら織り進めました。
最終的に、使用した色は600色を超えました。
一般的な織物で使う色数の数倍にあたります。
こうして織り上げた作品は、千葉銀行 新本店ビル 大ホール前のホワイエ壁面に、2枚のパネルとしてお納めしました。
絵画とはまた違った東山魁夷の大作を、空間全体で感じていただければと思います。
西陣織綴錦パネル「濤声」