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川島コレクションより 天鵞絨帛紗「寿老人之図」など掛帛紗を展示中

川島コレクションより 天鵞絨帛紗「寿老人之図」など掛帛紗を展示中

川島織物文化館では、2021年4月20日(火)まで、「福を呼ぶ帛紗(一)」として、川島コレクションより、贈答の際に使用する掛帛紗を展示中です。

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川島織物文化館 「福を呼ぶ帛紗(一)」(~2021年4月20日) より 

近年ではあまり目にしなくなった掛帛紗(かけふくさ)ですが、江戸時代以降、慶弔や季節の挨拶などあらゆる贈答に使われてきました。川島織物セルコンにも、明治中期頃に考案した図案が多く残されています。吉祥文様をはじめ、舞楽や自然の風景などバラエティに富んだモチーフから、自由な発想で製作され、様々な場面で使用されていたことがうかがえます。
新しい生活様式の中で、思いを込めて「贈る」という古き良き風習が守り伝えられていくことを願い、今回の展示を企画しました。

天鵞絨帛紗「寿老人之図」(ビロードふくさ「じゅろうじんのず」)

ここでご紹介する天鵞絨帛紗「寿老人之図」(ビロードふくさ「じゅろうじんのず」)は、七福神の一人・寿老人を織り出したもので、初代・二代川島甚兵衞が織物研究のために収集してきた「川島コレクション」のうちの一つです。

天鵞絨帛紗「寿老人之図」
鳥(右上)の拡大

実はこの作品には「天鵞絨帛紗 西陣名工 平野屋井上利右衛門作 約百年前」と書かれた札が添えられていましたが、この内容に関する詳細は分かっていませんでした。

展示にあたりこの札の内容を再調査をしたところ、1916(大正5)年に西陣織物館(1914年竣工、西陣織同業組合による西陣織の陳列館)から出版された、染織作品集『錦綾』(あやにしき)第1巻に、「川島甚兵衞所蔵 天保年間 西陣 平野屋利助 作」として掲載されている天鵞絨帛紗「壽老」が、この「寿老人之図」と同一の作品であることがわかりました。
そこで、製作者についてさらに調べてみると、「井上利右衛門」ではなく、『錦綾』の記載通り「井上利助(通称・平野屋利助)」であること、この天鵞絨の技法は利助一代限りで途絶えたこと、また利助は生涯にこの種の織物を7点、製織したと伝わっていることがわかりました。

天鵞絨(ビロード)

ではここで、『天鵞絨』という織物について、少しご説明しましょう。
織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)からなります。織物の多くは、経糸は織物の上端から下端まで切れることなく緯糸と交錯し織物の土台を形成しつつ、緯糸との組み合わせで柄を表現していきます。
一方、天鵞絨は非常に特殊な織物で、表に見えている柄(パイル)の部分はすべて経糸でできています。土台となる経糸の他に、パイル専用の経糸を別に持ち、表に見えている柄(パイル)の部分は、すべてこのパイル用経糸でできています。柄の色が変わるということは、その部分は別の色のパイル用経糸が必要ということになります。

寿老人の衣装部分の拡大 色の付いたループ状になった縦方向の糸(経糸)が、柄を表現している。
更に拡大

川島コレクションに逸品あり! 

この「寿老人之図」のような、色数の多い柄を織り出すとなれば、膨大な量の経糸を用意し、あらかじめ機(はた/織機)にセットしておかなければなりません。天鵞絨で柄を表現することが難しい理由の一つは、ここにあります。
ところがこの天鵞絨帛紗は、そのような方法を取らず、色が切り替わるたびに、その部分の経糸を継ぎ直して柄を織り出したことが、これまでの調査研究で判明しています。織物の製織中に経糸を継ぎ直すというのは、通常よほどのことがない限り行わないことであり、その上、継ぎ直した経糸の本数を考えると、気が遠くなるような作業です。たった7点しか織られなかったことや、技法が一代限りで途絶えたのも理解できます。

このように、調査の過程で思わぬ発見があることも珍しくありません。まだまだ解明できていないことも多い川島コレクション。このような発見に巡りあえた瞬間は、スタッフにとって何ものにも代えがたい喜びです。
川島コレクションに逸品あり! 今後の展示企画にご期待下さい。

守りたい贈るこころ 「福を呼ぶ帛紗(ふくさ)(一)」

会期 開催中〜2021年4月20日(火)(予定)
会場 川島織物文化館
休館日 土・日・祝祭日、夏期、年末年始
(川島織物セルコン休業日)
入館料無料
関連リンク展示情報
福を呼ぶ帛紗(一) チラシ
その他※ご見学は完全事前予約制です。
※新型コロナウイルス感染防止のための対策を講じた上で、運営をしています。
 ご理解とご協力をお願いいたします。
 詳細は ホームページ をご確認ください。

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