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色鮮やかに、華やかに 時代の色を映す帯のデザイン

色鮮やかに、華やかに 時代の色を映す帯のデザイン

洋装に比べればずいぶん緩やかながらではありますが、明治、大正、昭和と変遷を続けてきた着物の帯。明治の頃は大きな柄が出来なかったのです・・・。
川島織物文化館では、2021年6月30日(水)まで、帯の変遷を紹介する「素敵な帯 みつけた」展を開催中です。

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織機の進化も関わる帯のトレンド

川島織物文化館がある京都洛北・市原では、花桃が満開になりました。新型コロナウィルス感染拡大の影響でお花見も難しい昨今ですが、やはり春の気配を感じると心が浮き立つもの。いそいそと萌黄(もえぎ)色の帯揚げや桜色の帯締めを取出し、着物の春の装いを考えてみると同時に、川島織物セルコンでは創業以来、どのような帯を世に出してきたのかと、思いを巡らせてみました。

劇的に変化した明治の帯

明治のころ、川島織物セルコンが制作していた紋織の帯といえば、小さな図柄を横にも縦にも何度も繰り返し、帯全体をびっしりと埋め尽くした意匠(デザイン)が主流でした。紋織物を手掛けようと工場にジャカード織機をようやく導入はしたものの、まだまだ空引機(そらひきばた)という小さな柄を織ることに長けた織機が活躍していた時代でした。空引機の特性に合わせ小さな柄が繰り返されていたのですが、柄が小さい分どうしても地味な印象を与える出来栄えでした。

極小の文様を表現した帯の原画(左) と 試織(ためしおり)(右)

明治6(1873)年、開国に伴い、西陣に紋織物用の装置であるジャカード機がフランスからもたらされました。紆余曲折を経ながらも、国産化にも成功したジャカード機は、空引機に代わって紋織物の製織の主役となっていきます。この織機の普及は、それまでの紋織物に対する「1点物」「超高級品」というイメージを払拭、同じ織物の量産化と効率化を可能にし、紋織物の需用は拡大していきました。

そんな中、川島織物の二代当主であった川島甚兵衞は、大きな図柄を織ることも比較的容易であるジャカード機の特性を活かして「帯地は衣裳の中心となるものであるから、最も派手な模様を用いねば」と思い立ちます。早速に考案した大ぶりの柄の帯を主力商品とし、全面に打ち出して売り出しました。これまで市場に無かった斬新な図柄の帯は、大好評を博し一つの流行を生み出しました。

柄もリピートも大きく華やかになった帯の試織

ロマンあふれる大正の帯

ファッションのみならず建築・工業製品など、様々なデザインがアール・デコの影響を受けた大正時代、モボ・モガと呼ばれる最先端の洋服に身を包んだ男女が都会を闊歩する中で、一見変化がなさそうな和服の世界にも、その影響はじわじわと浸透して行きました。帯を締める位置が上がることで、シルエット自体も変化し、羽織丈が長くなったのもこの頃です。
もちろん帯の図柄や配色も例外ではありませんでした。川島織物も時代の波にのり、一部の商品に最先端のデザインを取り込み、これまで当社の帯には見られなかったモチーフと大正ロマンあふれる色使いの新しい帯を発信していきました。

葉牡丹をモチーフにした原画(左) と 試織(右)

モダンただよう昭和の帯

明治以降、比較的早く洋装化が進んだ男性とは違い、着物は昭和の半ば頃まで多くの女性の生活着であり、ファッションの中心であり続けました。昭和の時代も、川島織物では婚礼用丸帯から洒落帯まで幅広く帯を手掛けてきました。

婚礼用の丸帯(左) と シャレ帯(右) 双方とも試織

流行は繰り返すと言います。特に洋服の世界では、流行のサイクルがめまぐるしく変化します。そんな洋服に比して、時には劇的に、時に緩やかに時代と共に変遷を遂げてきた帯ですが、約100年間の間に、空引機で織り出していた極小柄の帯が再び脚光を浴びたという記録は見当たりません。果たしてこの先、極小柄の帯を再び商品する日は来るのでしょうか。 

明治期から現代に至る帯の変遷を、正絵(デザイン画)と試織でたどる特別展「素敵な帯 みつけた」を、川島織物文化館で6月30日(水)まで開催中です。帯を見つめて、タイムスリップしてみませんか。

明治から令和に伝える 時代に寄り添う和の装い「素敵な帯 みつけた」

会期 開催中 〜 2021年6月30日(水)(予定)
会場川島織物文化館
開館時間10:00 ~ 16:30(入館は16:00まで)
休館日 土・日・祝祭日、夏期、年末年始
(川島織物セルコン休業日)
入館料 無料
関連リンク 展示情報
素敵な帯みつけた チラシ
その他 ※ご見学は完全事前予約制です。
※新型コロナウイルス感染防止のための対策を講じた上で、運営をしています。
 ご理解とご協力をお願いいたします。
 詳細は ホームページ をご確認ください。

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