織物ができるまで 5 織る
- ORIMONO
タテ糸とヨコ糸を交差させて作る『織物』。単純そうに見えて意外と複雑で、実は織物も設計して作っていきます。
織物が出きるまでを5回にわたって紹介する第2回目です。
デザイン画が完成すると、次は「設計」に取り掛かります。
「設計」とは、作りたい織物のタテ糸とヨコ糸の組み合わせを考えることです。つまり、平面であるデザイン画を、立体である織物にするにはどうしたらよいのかを、具体的に指示する設計図を作るということです。
目次
織物の柄や凹凸を、用途・機能・品質など完成品に求められる条件を満たし、かつ、美しく仕上げるために、どのように表現するかを考えていきます。織物の素材である糸を、タテ糸・ヨコ糸それぞれどのくらいの太さでどのくらいの量を、またどのような素材のものを用いるかを決め、実際に織る際に必要な糸の情報も指定します。
この工程で行う主なことは、
・「織組織(おりそしき)」を決める
・「配色(はいしょく)」をする
・「意匠図(いしょうず)」を作製する
の3つです。
織組織とは、タテ糸とヨコ糸が交差して、織物平面を形作る規則性のことです。噛み砕いていうと、織物を目を凝らして見たときのタテ糸とヨコ糸の交わり方が、まさに織組織です。この織組織の代表的なものが、三原組織と呼ばれる『平織(ひらおり)』、『綾織(あやおり)』、『朱子織(しゅすおり)』の三種類です。
織組織(おりそしき)を決めるとは、まさにこのタテ糸とヨコ糸の組み合わせ方を決めていく工程です。織物はこの組み合わせによって、表面に凹凸や風合いが生じるのです。
配色とは、色の配置や組み合わせのことを言います。決めたデザインを織物で表現するために、どの色の糸を、どう組み合わせるか、を考える工程です。
糸の組み合わせを考える際、ただ美しく見えるだけではなく “ 織物としての良さ ” を最大限に引き出すことが大切なポイントです。織る方法や手段によっては、使用できる色の数が制限されたり、色の見え方が変わるため、限られた条件の中でいかにデザインを表現できるかも考慮しなければなりません。
デザインの色に合わせて、ストックしている糸、色の見本帳、カラーチップという印刷物やインクの色基準となる紙片などの中から色糸を決めていきます。
しかし、それら色からでは目指す織物が表現できないと判断した場合には、新しく色糸を作り出す場合もあります。
ただ単に、既存の色糸から配色を決めるのではなく、その色を糸で再現するための最善の方法を日々、試行錯誤するなど、より良い織物を生み出すための努力は惜しみません。
「意匠図」とは、織物を織る元となる、デザインのデータのことです。方眼紙のような罫線の入った紙、そのマス目一つ一つを色分けすることでデザインを描いていきます。平たく言うと、方眼紙に点描で絵を描いていくようなイメージになります。このマス目の密度は、タテ糸とヨコ糸の密度に比例し、マス目が小さくなっているところはタテ糸とヨコ糸が密集している部分です。
織組織を決定し、使用する糸・配色・糸の組み合わせ方が決まると、それを機械や織り技術者が実際に織るためのデータ(紋紙、紋データ)を作成します。このデータには、タテ糸を上下させるタイミングや、どの色のヨコ糸をいつタテ糸に通すか、また、ヨコ糸を通す順番などの情報が詰まっており、模様を織るための大切な指示書のような役割をはたします。
しかし、このような指示書やデータを作成して終わるわけではありません。試し織りをして、色の出方や凹凸感などが狙い通りになっていなかった場合は、色を検討して糸を染め直したり、織組織を考え直したりして、作りたい織物を追い求めていきます。
こうした一連の流れで、問題が無かった場合に、ようやく次の工程へと進むことができるのです。
織物によっては、特別な質感を表現するために、設計の工程の中で、撚糸(ねんし)の使用を検討することがあります。
撚糸とは、糸そのものをより合わせたり、結んで玉を作るなどの工夫を、糸に施すことです。なぜこのようなことをするかというと、糸そのものの形に変化をつけることで、糸に装飾性を持たせ、織物としての表現の幅を増やすためです。
もしかすると、お手元にあるカーテンの表面を目を凝らしてご覧いただくと、普通の糸とは少し形状の異なった糸があるかもしれません。
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