織物ができるまで 5 織る
- ORIMONO
色々な色や柄の織物をつくるために、様々な糸を様々な方法で染めていきます。繊細な絹糸は手で染める事が多い糸です。織物が出きるまでを5回にわたって紹介する第4回目です。
目指す織物を製作するために、とても重要な要素となる糸。
川島織物セルコンでは、製品ごとに最適な種類の糸を用いています。そして、糸によって染め方も変えています。
目次
ポリエステルやレーヨンは多くを機械で染めていますが、着物の帯に用いる絹糸(きぬいと)は、手で染めています。とてもデリケートな絹糸は、決められた量を、なるべく短時間で、染まり具合を逐次見極めながら、染めなければならないからです。
絹糸は、蚕蛾(かいこが)という蛾の幼虫が繭(まゆ)を作る際に吐き出した糸を加工したものです。つまりこの絹糸、元をたどれば生き物だったのです。このような天然素材は、産地により特徴が異なるため、同じように染めることが難しいなどの理由から、微調整を行える人の手で染めていきます。
また、染色の際には、糸を一定の大きさの枠に巻き取って束にした、綛(かせ)という状態で染めています。ちなみにこの綛という漢字は国字といい、日本独自の漢字です。
さて、では染めましょう・・・と言いたいところなのですが、仕入れたままの絹糸は、セリシンと呼ばれるタンパク質が糸の周りについているので、そのまま染めるとうまく染まりません。まず、洗剤を入れたお湯(アルカリ性)につけてセリシンを落とします。この工程を精練(せいれん)と言います。
セリシンを落とした糸を、お湯を張り染料を入れた釜に入れます。ほとんどの場合、色の基本三原色である赤・青・黄の3色の染料だけで染めます。
また、当社では草木から採取した自然の染料で染める場合もあります。染料の配合や分量、お湯の温度や染色の時間などは、全て熟練の技術者が培ってきた経験によって決めています。
手染めは、二本の金属の棒のような器具を交互に上げ下げし、染まり具合を確認しながら染料を調整します。長時間お湯につけていると、絹糸は色が変わってしまいます。ですから悠長に染めている時間は無く、短時間で目指す染まり具合にするにはどの染料をどのくらい用いるべきか、現在の染まり具合から完成の染まり具合にするには、どの染料が足りていないか、足りていないのならば、どの色の染料をどのくらい足すべきか、といった見極めをしなければなりません。
さて、糸の準備も整いました。次回はいよいよ織りの工程です。
突然ですが、生糸(きいと)と絹糸(きぬいと)のは違うということをご存知ですか?
蚕という蛾の幼虫が作った繭を茹でて、糸を取り出した状態を生糸といい、生糸の表面にあるセリシンという物質を洗い流す加工をした物を絹糸といいます。
“絹糸”という言葉を耳にした時、「絹のような触り心地」という形容を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに“絹”糸はとても艶やかで触り心地が良いのですが、何も加工しないままの状態の“生”糸は、意外とざらざらとした肌触りをしています。
このザラザラとした感触の原因は、セリシン(タンパク質)が糸の周りに付着しているからです。お湯につけてこのセリシンを落とし、光沢のある滑らかな手触りの“絹“にしているのです。
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