帯のお手入れってどうするの? 帯メーカー推奨版!
- OBI
着物や帯については、ネットや本でいろいろ調べて分かるようにはなってきたけれど、買うのはちょっと・・・。
KAWASHIMA Stories では、これまでに袋帯や名古屋帯について詳しくご紹介してきましたが、今回はいよいよ「選ぶ」時に知っておきたいポイントについて紹介します。
目次
皆さんは、どのようにご自身が着る着物や帯を選んでいますか? カジュアルな日常着であれば、好きなものを着れば良いのですが、着物初心者の方などは、「フォーマルシーンの和装はルールがあって難しそう」と思われるかもしれません。今回は、帯をご自身で選ばれる際に参考にしていただきたいポイントをご紹介します。初めて自分で着物を選ぶ時、着物に精通した方が隣でアドバイスをくださる環境であれば良いのですが、そのような幸運な状況の方ばかりとは限りません。知識がゼロの状況で選ぶのは不安ですね。今回は帯の販売スタッフに、帯を買う時のポイントについて聞いてみました。
帯を実際に購入する場合、「合わせたい着物があれば、現物をお持ちいただいたり写真をご用意いただくとお決めになりやすいですよ」と販売スタッフ。着物と帯のコーディネートがうまくいくととても気持ちの良いものです。また、着るシーンによっては、合わせ方や着物と帯の種類を気に掛けた方が良い場合もあります。和装は洋服に比べると数を揃えるのも難しくコーディネートのバリエーションも限られてしまいます。ついてはお召しになりたい着物が決まっている場合は、ぜひ店頭でお知らせください。店頭のスタッフも、お召しになる着物が決まっていれば、合わせる帯も具体的になり、より的確な提案をしやすいそうです。
まずはシーンをイメージして、今回は、
・式典参列などの少しフォーマルなシーン
・30代~40代くらいの女性
が、お召しになる場合を想定して、帯を買うシーンをシミュレーションしてみました。
まずは、ピンク色の訪問着に合わせてみました。
流水の流れの上に扇と四季の草花が描かれたデザインでとっても上品な印象の着物です。
「まず白やクリーム系の地色はどんな着物にも合わせやすい色だと思います」と帯を着物の上にのせてみます。
ピンクの訪問着も上品ですが、そこに白やクリーム色系の帯を合わせていくと、全体の雰囲気も “間違いのない” といえる組み合わせに見えます。
この組み合わせが模範解答・・・と考えてしまいそうになりますが、「同じ白でもこちらはどうですか・・・」と次の帯が登場しました。
写真右側の七宝と呼ばれる輪が繋がった柄の帯です。こちらも同じ白系統ですが、先ほどの帯と比べると、より純粋な白です。
どちらの帯も着物に調和する「色」ですが、柄や色味の違いもあり、受ける印象は変わります。ここからは、お客様の好みや雰囲気、着用シーンによってどちらをお勧めするのかを決めていくそうです。初めての帯を選ぶ場合は、まずは白やクリーム系の帯を合わせてみるのもおすすめです。
白地の帯をすでにお持ちのお客様には、「2本目3本目にお持ちになる、違う色をおすすめすることも多いですよ」と販売スタッフ。なるほど、腕の見せ所は白・クリーム系以外の帯の合わせ方のようです。
では、白やクリーム系の以外の色合わせに挑戦するには、どのようにしたらよいのでしょうか。
次の帯はこちらの薄紫地に松葉の意匠が表現された帯。
実際に着物の上に合わせてみますが、先ほどの白に比べるとより着物に溶け込み、落ち着いた印象になります。
ピンク×紫の組み合わせは、色の調和や相対関係を表す色相環という表で隣に位置し、調和する「類似色」の関係と言われています。このように、着物の色に対して類似色を選ぶのも、 ”こなれ感” が出てよい組み合わせです。
さらに「同じ紫でも、こんな帯も合いますよ」と合わせてみたのは、紫なの?と思うほど、金糸や色糸が入った帯。こちらも紫色がベースなので置いてみると、いい具合にマッチします。
「こちらの帯は、不思議といろいろな色の着物に合わせられるのですよ」と販売スタッフ。地色が紫なのでピンクの着物との相性が良いのですが、柄を織り出す糸が多彩なため、他の着物にも合わせやすい帯です。
着物を初めて買うという人が、初めから一人でピンク × 紫のコーディネートを選ぶことはないかもしれませんが、実は洋服のコーディネートであれば、この類似色の組み合わせは、自然に無意識にされているかもしれません。色合わせの感覚は、和装も洋装を選ぶときと同じでOKという考え方もあります。着物をよくお召しの方のなかには、和装独特の色合わせを楽しんでいる方もいらっしゃいますが、初心者の方や自信が無いという方は、まずは、ご自身がお持ちの色彩感覚を大切にしてみて下さい。「洋服感覚と言われても迷うわ・・・」という方は、具体的な着物やなりたいイメージを、店頭でスタッフの方に見せてアドバイスを求めてみてはいかがでしょう(美容院でイメージ写真やインスタを見せたりするのと一緒ですね)。具体的にイメージする着用シーンがあれば、それも合わせて相談されると、カジュアルな場であれば自由に、フォーマルな場であればある程度のルールを押さえて・・・というように。 “自由に考えて良いところ” や、逆に “ここは押さえておいたほうが良い” ということも教えてもらえます。
それでは次に、柄合わせのことも考えてみましょう。着物か帯どちらかが無地であれば柄合わせを気にする必要はありませんが、どちらにも柄がある場合は、柄についても合わせ方を考える必要があります。
最近ではフォーマルであっても寛容に考える傾向にあり、まずは「色合わせが良ければOKで、その先に柄合わせの楽しみがある」という考え方もありますが、柄の由来などを知ったうえで着物コーディネートを考えていくのは和装の醍醐味でもあります。コーディネート上級者の中には、その日のシーンに合わせて着物・帯・小物でテーマを決めて柄を取り入れる方もいらっしゃるほどで、柄合わせは深堀りもでき、いろいろな楽しみ方ができるテーマです。しかし、初心者だから、知識がないからと言って怖がることもありません。
柄の合わせ方について、良く言われるのは、下記のようなことです。
・形を合わせる
丸型の模様には丸い形の文様、四角形の柄には四角い形の模様といったイメージです。
・雰囲気を合わせる
柄の描きぶりを合わせると言われます。
例えば、中国の水墨画とレースの柄はマッチしにくいと言ったイメージです。
・時代を合わせる
柄の由来となった時代を合わせるとしっくりいきます。
古典文様ならば、古典文様(正倉院柄)を合わせるといったイメージです。
今度は、濃いブルー地の着物で柄合わせを考えてみました。
こちらは「正倉院文様」と言われる奈良時代の唐花模様が描かれています。こちらの柄合わせのポイントは、先ほどのルールにのっとると、正倉院文様の着物なので、正倉院文様の帯を合わせるとほぼ間違いはありません。
先ほど登場した七宝が描かれた帯はいかがでしょう。色はオールマイティーな白系の色なので問題ありません。柄も着物の正倉院の唐花模様は曲線で、帯も七宝の帯は曲線ですので、形を合わせるという観点からこちらは間違いのない合わせ方です。
ただ、「正倉院の文様の着物だからぴったりの正倉院の文様を合わせようという考え方もあるんですけど、私なら少し変えたくなりますね」とは販売スタッフ。和装の柄合わせでは、前述のように ”同じ柄の組み合わせ” “同じ描き方の組み合わせ” “同じ時代背景の組み合わせ” が合うと言われることも多いのですが、「あえて同じものは持ってこない」という考え方で楽しむ方もいらっしゃいます。
例えば、こちらは白地に松葉が工芸的に描かれている帯です。もちろん白はオールマイティーなので色は問題ありませんが、柄はどうでしょうか。着物の正倉院の唐花模様は曲線で、松葉のデザインは直線が強調された幾何学的なデザインですから、形を合わせるという観点からは外れていますが、こちらも問題の無い合わせ方です。調和を少し外すという目線での合わせ方です。柄合わせに慣れてくると、「なんとなく物足りないな」と感じた時には、こんな合わせ方からトライを始めてみてもいいかもしれません。
着物の柄は美しいものが多く、見ているだけでも楽しめます。また、近年では、柄合わせについてもより寛容になり、知らなくて合わせていても問題の無い場面は増えましたが、意味や由来などを知ると、より楽しくなるのも和装の魅力です。
しかしながら、着物の柄は数えきれない程あり、インターネット上で調べるだけでも大変です。もし興味があれば、ご購入時に販売員の方に聞いておかれる事をおすすめします。
最後に、色や柄の調和の他に織物メーカーだからこそ伝えたい帯選びのポイントとして「締め心地」について紹介します。長時間帯を締められるような方や、ご高齢の方などがに特に気に掛けられるのが締め心地ですが、実は若い方や初心者にとっても長く愛用したいと思う帯(ヘビーローテーションする帯)の条件とも言われており、帯メーカーとしてとても大事にしているポイントです。
締め心地についての当社の帯への評価は、長年愛用してくださる方、着付けを生業にされている着付け師の方々などから「川島の帯はやっぱり締めやすいですね。」「身体によくなじみます。」という言葉をいただいてきました。具体的には、「軽い」「触ると優しく柔らかい」「緩まない」「戻りすぎない」「長時間締めていても苦しくない」「手になじむ」「良い風合い」というようなことのようです。
こういったお声をお客様から頂けることについて、川島織物セルコンで長年、開発に携わってきた担当者は、良い帯は締める方個々のお好みがある、と前置きした上で「当社が現在多く生産している袋帯は、当社独自の規格であり、袋帯が多く流通し始めたころに、試作を繰り返して考えたものが始まりです」と言います。織物の規格というのは、組織や糸の太細、糸の密度(量)などの織物の基本的な設計のことですが、その規格は当社独自のもので、デザインの進歩はもちろん、締めやすく、軽く、身体になじむ風合いも模索したということです。
当社に限らず、西陣織の各メーカーは、こういった独自の規格を持っており、それぞれ特徴のある帯地を作っています。川島織物セルコンは、長年にわたって培ってきた組織設計や素材選びのノウハウを生かし、新たな技術も取り入れながら、良い締め心地を追求し続けています。
締め心地については色合わせや柄合わせとは違って、見た目のみで判断できるものではなく、実際に帯を締めて活動いただく際にお感じいただけるものだと思います。機会がありましたら、「川島織物の帯」の締め心地や触り心地、軽さをぜひ確かめていただければと思います。
今回は、帯の選び方として、色・柄・締め心地についてお話いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
フォーマルな場面では、ある程度TPOが重視されますが、かといって ”これしかダメ!” ということはなく、色も柄も自身の好みが意外と反映でき、洋服選びに通じるところがあります。じっくりと楽しみながら、あなたに合った帯を探してみてください。ぴったりの帯との出会いをお祈りしています。
「こんなことが知りたい!」というご要望や、ご意見・ご感想などがございましたら、こちらよりお問合せください。
帯に関するお困りごとにつきましても、ご相談をお受けいたします。
「和つなぎラボ」は和装に関わるメーカーとして着物を通じた体験のお手伝いができればと考えています。
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